染谷 隆夫/SOMEYA Takao

染谷 隆夫 教授

【研究分野】
ナノ物理・デバイス分野
【研究領域】
有機・分子エレクトロニクス、フレキシブルデバイス・システム、生体情報計測、ウェアラブルデバイス、体内埋植デバイス
【研究室URL】
http://www.ntech.t.u-tokyo.ac.jp/

研究内容

染谷研究室では、次世代アンビエントエレクトロニクスの実現に向けて、印刷技術を駆使して作製されるフレキシブル有機トランジスタに関する研究に取り組んでいる。

研究の背景

シリコンを中心とした既存のエレクトロニクスでは、デバイスの寸法を微細化することによって低消費電力化、低コスト化、高速化が同時に実現できた。ところが、シリコンデバイスがナノ寸法まで微細化されて、微細化限界を迎えつつある一方で、人間と等身大の大面積のエレクトロニクスが重要性を増してきている。染谷研究室では、安心・安全・豊かな社会を実現するためには「情報仮想空間」で計算機の演算速度を上げるだけでは限界があり、これからのエレクトロニクスは人間が生活する「実空間」に発展すると考える。そうしなければ、微細化限界を目前に控えたエレクトロニクスの産業的、学術的な閉塞感は打破できない。人間の「実空間」と計算機の「情報仮想空間」を橋渡しするインタフェースを作るとなると、人間と等身大の大面積のセンサやアクチュエータが必ず必要になる。染谷研究室では、応用上の鍵となる「有機トランジスタで大面積の集積回路が容易に作れること」に着眼し、世界ではじめて有機トランジスタを用いた大面積のシートセンサやシートアクチュエータを実現し、実空間におけるエレクトロニクスへ応用する可能性を示した。具体的には、高分子フィルム上に有機トランジスタと多種のセンサやアクチュエータを集積化し、電子人工皮膚や点字ディスプレイを試作するなど新用途を次々に提案・実証している。

研究テーマ

現在取り組んでいる研究テーマの柱は次の通りである。

1)大面積エレクトロニクス
有機トランジスタの大面積性とフレキシビリティに注目し、大面積のセンサやアクチュエータへ応用する研究を進めている。この手法で、次世代ロボット用電子人工皮膚やシート型のイメージスキャナーなど有機トランジスタならではのユニークなアプリケーションを次々と実現してきた。研究室では、これらの研究をさらに発展させ、現在はゴムシートのように伸縮自在な集積回路の研究に取り組み、次世代のヒューマンインタフェースへの応用を目指している。

2)ナノ印刷プロセス
では、どうやって大面積フレキシブルデバイスを作るのか?研究室では、ナノテクノロジーを駆使して、金属ナノ粒子や分子性ナノ材料を印刷技術でパターニングし、高性能な有機トランジスタ集積回路へ応用する研究に取り組んでいる。これまでの研究によって、印刷でつくられた回路の性能をアモルファスシリコンなみに高めることに成功している。現在は、インクジェット印刷と自己組織化単分子膜を融合した独自の印刷技術を活用し、有機デバイスをナノ微細化する研究に取り組んでいる。

3)有機デバイス物理
有機デバイスの動作原理は、未解明の部分が多い。研究室では、有機トランジスタや有機ダイオードのデバイス物理の解明を目指している。例えば、プラスティックシート上の有機デバイスを繰り返し折り曲げて、歪がキャリア移動度に与える効果を解明した。さらに、温度特性やホール効果を計測し、有機デバイスの物理を探求している。また、最近では、ナノチューブやグラフェンなど炭素系ナノ材料を伸縮性導体に応用する研究を展開し、これらの新材料における新物性を探索している。

学生へのメッセージ

染谷研究室は、印刷によって有機トランジスタ集積回路を作製できるなど国際的にもユニークな「ものづくり」が中心の研究室である。先端科学技術分野において研究が高度に専門化し分業が進む中、染谷研究室では、自分で計測するデバイスは最初から最後まで自分で作製するというスタイルを頑なに守り通している。このスタイルにこだわる理由は、大面積エレクトロニクス分野はまだ黎明期にあって、ものづくりの場における日々の創意工夫にこそ飛躍へのチャンスがあると考えているからである。実際に、点字ディスプレイや新有機メモリなど多くのアイディアは、染谷研究室の大学院生によって発案されたものであり、これらの成果によって研究室の大学院生はSSDMYoung Scientist Awardをはじめとする数多くの賞を受賞している。情熱と創造力溢れる大学院生との共同作業で生み出されたこれらの研究成果を私は何よりも誇りにしている。これらの先輩に続く新しい大学院生を迎え、次の時代を一緒に切り拓きたい。

図1:プラスティックフィルム上に作製された有機トランジスタ。
図2:世界初、有機トランジスタを利用して実現されたロボット用の電子人工皮膚。
図3:インクジェットなど印刷技術で作製された大面積フレキシブル集積回路。
図4:世界で最も電気を流すゴムを配線に使った伸縮自在の有機トランジスタ集積回路。