EEIS 東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻

小林 徹也 教授

駒場キャンパス

バイオ・複雑系
数理情報学
ソフトコンピューティング
生命・健康・医療情報
システムゲノム科学
生物物理学

情報と数理の概念と技術で捉える生命現象

本研究室では、様々な生体定量データに理論的・情報学的アプローチを統合することで、生命システムの情報処理やロバスト性などの支配原理を明らかにすることを目指します。

研究分野1

生命の情報処理の原理を理解する

進化が作り上げた生命の情報処理系を理解するために、我々は3つの要素が重要であると考えています。 一つ目はどれくらいよくできた情報処理が実現しているのか(情報処理の最適性)、 二つ目は実現している生物系は物理や化学的な法則にどう拘束されているのか(物理化学的拘束)、 三つ目はそれらが進化的な過程でどうバランスして実現してきたのか(進化動態・自己複製能)です。 我々はこれらの問題を扱いうる数理情報的手法を発展させるとともに、それらを反応システム、細胞応答、集団動態、免疫、嗅覚、発生など、様々な現象に適用して生命の情報処理原理の理解を目指しています。
研究分野2

生体システムと情報処理の定量生物学とバイオインフォマティクス

近年のイメージング技術やシーケンス技術進展により、多様で複雑な生体システムの定量的で動的な性質を計測することが可能になっています。我々はそのようなデータを活用して生体システムの様々な性質を明らかにするために必要な定量データ解析技術やバイオインフォマティクス技術などを、機械学習や深層学習の技術を活用して開発しています。
研究分野3

生体情報処理の最適性

工学システムと比べても生体システムは「とても良くできている」と思う側面を無数に持っています。しかし生体の振る舞いが本当によくできたものなのか、という問に答えるには、生体が実現している機能がどれくらい最適なものに近いのかを理解する必要があります。我々は情報理論や制御理論などの最適化の理論に加え、非平衡熱力学のような物理理論を統合して生体機能や情報処理の最適性を扱う理論を構築しています。またその結果を免疫系や嗅覚系を始めとした定量的な計測と比較して、生体の最適性を検証しています。
研究分野4

生体機能と非平衡ネットワーク

工学システムが電気回路や機械でできているのと同様に生体システムの構成要素である細胞は化学反応のネットワーク(回路)でできています。そのネットワーク構造が生体システムの機能を決定し、また一般に非平衡状態で動作するネットワークの性質は、物理化学的な法則や非平衡熱力学的な特性に強く縛られています。我々は生体システムの機能や可能な振る舞いが物理や化学の法則によってどう制約されているかを理解するための方法を、ネットワーク理論に非平衡熱力学理論を組み合わせ開発しています。
研究分野5

生体の適応性における学習と進化の統合的理解

生体システムは確率的に変動する環境に柔軟に適応する能力を有します。 自然選択に基づくダーウィン進化は、環境適応の基本メカニズムの一つであり、生体は集団内に遺伝型・表現型の多様性を生成することで、未知の環境変動へのリスクを分散し、生存確率や適応度を高めます。 一方で、生体システムは環境を積極的に感知・予測し、事前に適応的な状態を選択することのできる脳の様な器官を発達させてきました。 この2つの適応機構はどのように関連しているのでしょうか? 我々はダーウィン的自然選択と予測的情報処理に共通する情報論的変分構造を用いて、この2つの適応機構を理論的に統合し、 生物に適応関する統一理論の構築とその応用に取り組んでいます。
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