小野 靖/ONO Yasushi

小野 靖 教授

【研究分野】
環境・エネルギー分野
【研究領域】
人工太陽、核融合エネルギー、超高温プラズマ、太陽エネルギー
【研究室URL】
http://tanuki.t.u-tokyo.ac.jp

研究内容

小野研究室は電磁気学やプラズマ工学をベースに、人工太陽=核融合エネルギー開発から太陽エネルギー、宇宙プラズマ、新エネルギーまでカバーします。人口爆発、環境破壊、資源枯渇のため現代文明は危機に直面するといわれ、CO2を大量放出する化石燃料から、環境保全性が高く、無尽蔵の資源量が見込める人工太陽=核融合エネルギーへの大転換が待たれています。投入エネルギーが発生エネルギーに等しくなるまで進歩し(科学的実証)、いよいよ国際熱核融合炉ITER(工学的実証)へ進展した核融合の将来課題は、如何に経済性を高め、実用発電を早めるかです。そのため、少ない磁場で多量のプラズマが閉じこめられる、いわゆるベータ値(単位磁界が閉じ込めるプラズマ熱圧力)の高い、高効率な磁気閉じ込め配位が必要不可欠です。我々はこれまで核融合炉の経済性を飛躍的に高める「球状トーラス」等の新アイデアの実証をTS-3およびTS-4実験を用いて行ってきました。米国、英国でも大型実験装置NSTX、MASTがスタートし、核融合研究は簡素さ、経済性を重視する新潮流を形成しています。

球状トカマクの超高ベータ化・コンパクト化

核融合炉の経済性、即ちベータ値を飛躍的に高めるため、ドーナツ型のプラズマ形状をギュッとコンパクトにします。我々が開発してきたこの球状トカマク(ST)は安価な核融合炉を実現する最有力候補に成長しました。高速度カメラ写真のように2個のSTを合体(磁力線再結合)させる独自手法でSTを急速加熱して、常識(10%)を大幅に越える60%のベータ値(プラズマ熱圧力/磁気圧)を持つSTの生成に成功しました。少ないコイル磁場でより多くのプラズマを閉じ込める超高ベータSTが安定に生成できたのは、ベータ値の上限を決めるバルーニング不安定が抑制される、いわゆる第2安定状態が実現されたためと考えられ、今後の成長が期待されています。

ベータ値の極限の追求と球状トーラスの最適化

我々のゴールは磁気閉じ込め容器の最適化です。中でもSTと逆転磁場配位(FRC)の有利な特徴に注目します。どちらもコンパクトに圧縮されたドーナツ磁場で超高温プラズマ(炉段階では1億度、数秒以上)を閉じ込めます。左下図のようにFRCは最も簡素に小円周方向の磁場のみを持つのに対し、STはさらにドーナツの大円周方向(トロイダル方向)の磁場を持つのが特徴です。1)STはトカマクの良好な閉じ込めを保ちつつ、磁場利用率を改善し、2)FRCは極限まで構造を簡単化して革新的な高ベータを狙います。両者の利点を融合し、欠点を補える安価で効率の良い磁場閉じ込め配位を創造しています。例えば、ベータ値の低いスフェロマックプラズマを2個、合体させると、従来より1ケタ高い電源効率でFRCが生成されることを見出し、現在、経済性の高い大型FRC生成法として注目されています。100%のベータ値を持つFRC型核融合炉は極めて有利ですが、FRCを安定に長時間維持できるか更なる検証が必要です。これらの成果により実験装置の大型化が予算化され、2000年にTS-4球状トーラス装置、2007年、UTST球状トカマク装置が運転を開始しました。

磁力線・プラズマ現象を解明するモデル実験・計算機解析

「磁力線で作った”閉じ込め容器”は何が最適か?」、「磁気容器の変形(不安定)や磁力線のつなぎかわり(再結合)はなぜ発生し、磁気容器にいかに影響するのか?」等、核融合炉のキーとなる部分を抽出したモデル実験を組み、問題の解明を行っています。プラズマ中の磁力線再結合現象の実験解析は典型例です。同現象は、核融合プラズマの閉じ込め悪化を招いたり、大きな加熱効果が得られたり、悪玉にも善玉にもなるため、その制御は重要です。我々のプラズマ合体法は米国Princeton大学、MIT、NASAなど多くの新装置建設につながり、学生の海外派遣による国際COE共同研究が進行中です。

学生へのメッセージ

研究で大切にしている点は、「オリジナルな研究」(オリジナリティー)を「他人に先駆けて」(一番最初であること)、「ものにすること」です。「学術性が高い」(学問の本質になるべく近い)ことも重要です。自ら調べ、考えて行動できる人、プラズマの研究者を目指す人を特に歓迎します。2010年より米国Princeton大学やWisconsin大学、英国Culham研究所、独Max-Plank研究所と国際COEを設立し、意欲があれば海外の学会への参加は勿論、共同研究のため、多数の学生を長期派遣し、世界の研究者と対等に渡り合う国際競争力ある人材育成を目指しています。2008年度より国際熱核融合炉ITER計画の求人に対応した国際競争力ある研究者育成のための「核融合コース(研究教育プログラム)」が発足し、キャリアパスも充実しました。

図1:TS-3およびTS-4球状トーラス実験装置(東京大学)
図2:球状トカマクプラズマの合体過程の高速度写真(東京大学UTST実験装置)
図3:トカマク、球状トカマク(ST)、逆転磁場配位(FRC)の磁力線の様子
図4:国際熱核融合炉(ベータ値5%)とコンパクトな球状トカマク炉(ベータ値30%)