大矢 忍/OHYA Shinobu

大矢 忍 准教授

【研究分野】
ナノ物理・デバイス分野
【研究領域】
スピントロニクス、量子ナノ構造
【研究室URL】
http://www.cryst.t.u-tokyo.ac.jp/ohya/index.html

研究内容

従来の半導体エレクトロニクスでは、電子の「電荷」の自由度が利用されてきました。一方、電子には「スピン」というもうひとつの自由度が存在します。本研究室では、半導体中のスピン自由度を積極的に用いて、新しいエレクトロニクス(スピントロニクス)デバイスの実現を目指しています。

スピン機能を有する新しい半導体材料と半導体ナノヘテロ構造の探索

私の研究室では、半導体中のスピンを制御するために適した材料系の探索を行っています。特に注目しているのが、半導体中の一部の原子を磁性原子で置き換えた「強磁性半導体」という材料系です。この材料系は分子線エピタキシー装置(Molecular-beam epitaxy; MBE)という装置を用いて作製することができます。この装置では、超高真空(10-9Pa=10-14気圧)中で分子ビームを試料に照射して一原子層ずつ結晶を作製します。そのため、非常に高品質な半導体の極薄膜を作製することができます。本研究室ではIII-V族半導体GaAs, InP, AlAsや、IV族半導体Si, Geなどをベースとして、それに様々な磁性元素を導入した半導体を自在に作製することができます。そういった材料系で、スピンの効果がどのように発現するかということに大変興味を持って研究を行っています。さらに、こういった材料を様々に組み合わせたナノメートルサイズの多層(ヘテロ)構造を作製することによって、社会の役に立つような新しい物理現象の発現を期待しています。物性が良く理解されていない材料や物理現象がまだまだ沢山あり、課題が山積みです。

スピン自由度と量子効果を組み合わせた新しい現象の開拓と応用

原子レベルの制御性を持つ分子線エピタキシーを用いる大きな利点は、原子レベルで平坦なナノ構造を作製できることです。このようなナノメートルサイズの人工的に制御された空間においては、量子効果によって様々な新しい現象が観測されます。実のところ、その中に磁性やスピンを加えると、どのような現象が見られるかについては、まだあまり良く分かっていません。本研究室では、私が長く研究を行ってきたGaMnAsという強磁性半導体を用いて、すでに図に示すような3端子の量子効果スピンデバイスの作製に成功しています。今後は、今まで研究されてこなかった新しい材料も導入して、誰もまだ試みたことのない様々なナノ構造を作製して、新しい現象の探索を行っていきます。

様々な装置を利用した幅広い研究

(結晶成長、300mK~室温の様々な測定、磁気伝導測定、磁気光学測定など)本研究室では、田中研究室と共同で研究を進めています。田中研究室の所有する様々な装置や、工学部10号館および武田先端知ビルのクリーンルームの装置も利用して、幅広い研究ができます。半導体結晶の作製はもちろん、磁気伝導測定、磁気光学測定、微細加工に至るまで、様々なことが可能です。私達が取り組んでいるような新しい研究では、非常に面白い現象であっても、初めは極低温でしか観測されないことも多々あります。そういった場合でも、その温度領域で詳細な測定を行うことにより、新しい側面が見えてきて、それが大発見に結びつく可能性もあります。本研究室では、非常に簡単に300mKの極低温を得ることができ、そのような状況下での研究を容易に行うことができます。極低温から室温に至るまで、皆さんの興味次第で、色々な研究を行うことができます。

学生へのメッセージ

新しい物質や構造を作ると初めは分からないことだらけですが、粘り強く追求してゆくと様々な新しい発見があります。決して楽な道のりではありませんが、やりがいがあります。将来の社会に役立つ新しい物理現象を、一緒に探求していきましょう。

図1:3端子量子効果スピンデバイス
図2:IV族強磁性半導体作製用分子線エピタキシー装置(MBE)
図3:高濃度の磁性不純物を含む原子レベルで平坦な半導体GaMnAsの格子像
図4:磁性不純物を含む様々な半導体の例(MnAsとGeMn)