名倉 徹/NAKURA Toru

名倉 徹 准教授

【研究分野】
半導体システム分野
【研究領域】
ミックスドシグナルLSIシステム
【研究室URL】
http://silicon.u-tokyo.ac.jp/

研究内容

トランジスタが微細化され、集積回路上のトランジスタ数は18カ月ごとに倍になります。「なります」というよりも、それを目指して技術開発し、実際にそれを実現しているのです。18カ月で倍ということは20年で1万倍ですね。この技術発展のスピード、すごくないですか?例えば今の車が20年前の車に比べて1万倍性能が良くなっているとは思えませんが、半導体の世界ではこれまでその速度で技術開発が進んできましたし、これからも進んでいくことでしょう。

これだけトランジスタの微細化が進むと、微細化トランジスタの性能を十分に引き出すための回路設計や、微細化に伴う副作用的問題を克服するための回路設計が必要になり、これまでとは異なる新しい回路設計技術が求められます。

アナログ集積回路の設計自動化

デジタル回路設計ではCADを用いた設計自動化が進んでいる一方で、アナログ回路は熟練技術者による手設計が主流となっています。ここで、手設計によるアナログ回路設計の考え方をきちんと分析整理してフローにまとめることで、アナログ回路設計もプログラムによる自動設計を実現することができると考えています。従来の電圧方向で表現してきたアナログ量を時間方向の表現に置き換えながらアナログ回路の大部分をデジタルブロックで構成する回路構成を考案することで、現在使われているデジタル設計用CADを併用しながらアナログ回路の設計自動化を実現しています。

集積回路の電源安定供給

最近のLSIはGHzで動作するたくさんのコアが1チップに集積され、それらのコアが頻繁にActive/Sleepを切り替えながら高速の計算を行います。ところが、その切り替えの瞬間にはuWレベルからWレベルへの急激な電流変動を伴うために電源ノイズが発生して誤動作を起こすことがあります。LSIの表面に高誘電体薄膜を利用した容量を形成したり、起動の瞬間にチャージを注入するなど、過酷な環境においても安定した電源を供給するための電源回路を実現しています。

集積回路の動作信頼性向上

IoTという言葉に代表されるようにLSIがあらゆる場所で使われるようになる一方で、車載向けLSIのように、LSIの故障が命にかかわる事故につながるような使用例が増えてきました。製造されたLSIは不良品が出荷されないように全品で出荷前テストを行いますが、工場のLSIテスタで行ったテスト環境と実製品での使用環境が異なるために正確なテストができなかったり、動作マージンを大きく取りすぎてテスト中に熱暴走するなど、LSIの出荷テストは困難を極めています。工場のLSIテスタ上に製品と同じ電源環境を仮想的に実現する技術など、必要十分な出荷テストを実現する研究を行っています。

学生へのメッセージ

LSI回路設計は、トランジスタを配置・配線して電圧・電流の流れを制御しているだけですが、そこには無限の可能性があります。ここには、自分で回路を考え、設計し、VDECを通じてチップを試作し、自分で測定することのできる環境が整っています。ぜひ、物理現象を把握・制御して新しい機能を実現する喜びと、実チップと向き合うことで得られる新たな発見の興奮を味わってもらいたいと思います。

図1:全自動合成PLLのレイアウトと実チップの測定結果
図2:STO容量フィルムとノイズキャンセル回路チップ
図3:実使用環境とLSIテスタ環境との乖離、およびその補償システム
図4:パルス幅PLLの回路図、チップ写真、測定系、測定波形