三田 吉郎/MITA Yoshio

三田 吉郎 准教授

【研究分野】
半導体システム分野
【研究領域】
知的半導体マイクロデバイス(MEMS)
【研究室URL】
http://www.if.t.u-tokyo.ac.jp/

研究内容

柴田・三田研究室「TeamMEMS」では、ナノメートル領域でのものづくりに軸足を置き、デバイスから回路・アルゴリズム・応用まで一気通貫に見通した研究を目指しています。TeamMEMSは、柴田・三田研究室と中野・杉山・種村研のメンバ中、主にMEMSを研究している部隊で研究室横断的にチームを作っているもので、連邦規格クラス1を誇る「武田先端知ビルスーパークリーンルーム」(山手線内で最も清浄な部屋といえる)と、工学部10号館電気系クリーンルームとを舞台に、半導体微細加工技術の腕を磨きながら、世の中に新しい電子デバイスを提案するべく研究を行なっています。MicroElectro Mechanical Systems(MEMS)という言葉を御存知でしょうか?アメリカでは80年代、日本でも90年代から聞かれるようになった、微小な機械構造とそれを応用した電子システムのことを言います。年々微細化が進行しており、MEMSのカバーする領域は現在では、髪の毛の直径程度(100μm)からその千分の一(100ナノメートル)に迫ろうとしています。既存の機械加工技術の限界を超えた精密機械ができること、特にMEMSはシリコンの微細加工技術を応用するために、電子回路と集積化できるという特徴があることなどの理由で、電気と機械を融合した高機能なデバイスができると期待されており、21世紀になった今日も益々注目を浴びている成長分野です。特に、今後は機械構造だけでなく、電子回路から先、アルゴリズムまでを見通せる研究者・技術者が必要とされるようになると予想され、電気系の素養が益々重要となってきています。

高度半導体微細加工技術

MEMSは半導体加工技術で作製します。半導体加工といえば薄膜形成・パターン転写・切削のいわゆる「積んで・リソして・削る」技術の集合といえますが、TeamMEMSはこの中でも「削る」技術、特に近年のMEMSで最も注目されている、シリコン深掘りエッチング技術を最も得意としており、フランスとの共同研究によって幅374ナノメートル、アスペクト比1:107という世界でも最高級の深掘り構造を作製し、国際会議等で発表しています。単に記録を出すだけでなく、エッチングの裏に潜む物理を理解し、物理の裏付けを持った上で、幅広い応用が効く新たな三次元微細加工手法を提案しています。チームに競争力があるので、入門してからきわめて短時間に成果を出すことも可能で、先輩達の多くがマスター1年生のうちから国際会議などの大舞台で活躍しています。

MEMS融合高機能半導体デバイス

できあがった微細構造はバネや重りなどの機械的構造として使い、センサなどにするのが一般的です。TeamMEMSではこの常識を一歩進め、三次元構造をただの機械構造としてのみ用いるのではなく、ダイオードやトランジスタなどの能動電子素子を高度に集積化して応用することを試みています。三次元MEMS構造がちょうど光の波長と同程度にまで微細化したため、機械的構造そのもので光の干渉や偏光などの制御ができるようになっており、これと電子素子とを協調させることで高機能な新型素子ができるだろうという目論見のもと、トレンチ型フォトダイオード(感度向上)や偏光素子集積化太陽電池(液晶の偏光板に使えばエネルギーを回収して有効利用できる)を考案したり、シリコンを10μm以下に薄くすると透明になると同時に自由に曲げることができるようになるので、これを利用して集積回路をシリコーンゴムの薄膜にはりつけて薄くすることで、透明、かつ、曲がる集積回路を考案するなど、自由な発想で世界に提案を続けています。

半導体デバイスとアルゴリズムの融合による高度情報処理

微細加工技術から半導体デバイスへ進化させる研究は、下から上へのいわゆる「ボトムアップ」方向の研究ですが、特に平成21年度からは、アルゴリズムからひもといて電子デバイスを提案する「トップダウン」の方向も充実させたいと考えています。例えば高機能なイメージセンサの分野はロボットや車などへの応用で今後の成長が期待でき、この方向にTeamMEMSの知見が活かせると考えています。情報学と半導体微細加工技術は遠い印象ですが、それだけに幅の広い充実した研究が楽しめることでしょう。

学生へのメッセージ

「最近の若いものはものづくりを知らん」などとよく聞かされるので、心配になったことはありませんか?TeamMEMSに限ってそんなことは心配御無用です。「超」のつく素人だった先輩も、アットホームな雰囲気に囲まれて毎日を楽しく過ごすうちに、あら不思議、自分で半導体プロセスを走らせるだけでなく、後輩に指導できるようになるのです。設計もあればビーカー片手の実験もあり、はたまた半田付けもありで、各々の得意技を生かしながら研究を進められることでしょう。
また、TeamMEMSはヨーロッパとの縁が深く、フランス国立情報学研究所(INRIA-ベルサイユ)、フランス電子工業技術高等学院(ESIEE-パリ)、スコットランドマイクロエレクトロニクスセンター(SMC-エジンバラ大)との交流を盛んに行なっています。共同研究に遊学に、国際派で鳴らしてみたいあなたにもお勧めです。

図1:アスペクト比1:107は世界でも最高級の記録。
図2:(左)信頼性と可能性の「いいとこどり」を目指す。
図3:MEMSの画像情報処理分野への応用。例えばステレオ視ではスピードと検出精度がトレードオフだがMEMSデバイスを融合することで速度と精度の両方を向上できるだろう。
図4:世界最高の装置を自由に使える。頑張ればすぐにエキスパートになれる。