松橋 隆治/MATSUHASHI Ryuji

松橋 隆治 教授

【研究分野】
環境・エネルギー分野
【研究領域】
エネルギー経済システム学、環境経済学、地球温暖化対応策
【研究室URL】
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/globalenv/matu

研究内容

近年、エネルギーの採掘から輸送、変換、利用に至る複雑な流れをシステムとして把握し、気候変動(地球温暖化)への対応策と関連付けて分析する研究が盛んになっています。我々は、1980年代よりエネルギーシステムのモデル分析と要素技術の研究を行い、柔軟性、経済性、環境性を考慮した最適システムの設計を行ってきました。また、供給側からの研究に加えて需要側の効用を分析し、エネルギー・環境関連技術の社会受容性を定量化する研究をおこなってきました。具体的には、以下のような研究テーマがあります。

低炭素社会の実現とその経済影響に関する研究

本研究では、まずポスト京都議定書の国際的枠組みの推定と評価に関し、次期枠組みの候補「セクター別アプローチ」をクロスインパクト法などのシステム工学分析手法を用いて分析してきました。また、日本政府が気候変動枠組条約の事務局に提出したポスト京都議定書の中期目標(温室効果ガスの削減に関する国家としての数値目標)に関し、その実現可能性と経済影響を応用一般均衡モデルを用いて定量的に評価しています。

気候変動の緩和に関する国内・国際制度の設計と評価に関する研究

本研究では、まず気候変動緩和と南北格差縮小を目的とした技術移転制度であるクリーン開発メカニズム(以下CDM)の分析を行いました。本制度には多国間の利害が関係し、効率的制度が作りにくいという問題点があるため、技術移転における各国の戦略をゲーム理論により分析し、地球環境を改善すると共に国益を考慮したCDMの戦略を研究しました。また、リアルオプション理論を応用し、CDMを活性化させるための排出権買取制度を提案し、その効果を評価してきました。現在は、CDMの後継候補である二国間クレジット制度や国内の温室効果ガス排出削減事業を活性化する国内クレジット制度についての研究を進めています。

エネルギー環境関連技術の市場性分析に関する研究

本研究では、環境経済学的手法を用いて、多様な革新的エネルギー技術の市場性を分析しています。例えば、太陽光発電、燃料電池自動車、省エネルギー家電、省エネルギー住宅などの属性と市場性の関係を、コンジョイントやCVMなどの手法を用いて分析し、これらの普及施策の効果を定量的に評価し、その制度設計を行うものです。

環境改善技術のライフサイクル評価に関する研究

本研究では、製品や技術の環境影響評価手法としてのライフサイクル分析の問題点を指摘し、それを克服する新しい手法を提案しました。新しい手法とは既存の手法における問題点、例えば動学的な考慮の不足や配分問題の矛盾を改善したものであり、こうした新規手法の提案を、太陽光発電や電気自動車などに適用しました。また、統計的手法を用いたライフサイクル評価結果の信頼性を検討し、またライフサイクル分析手法に基づく技術の普及戦略や新しい制度設計の提案を行ってきました。

低炭素社会における電力システムの研究

本研究では、豊かな低炭素社会を実現するための電源構成の在り方や小規模分散型電源と大規模集中型電源の協調の在り方を分析しています。具体的には、不確実な電力需要と社会受容の下での原子力発電の投資問題をリアルオプションにより分析したり、電気自動車、太陽光発電などを用いたスマートエネルギーネットワークの実証実験と最適システムの制度設計を行っています。

● 松橋は、現在、独立行政法人 学術振興機構の低炭素社会戦略センターの研究統括を併任しており、適宜関連する研究をおこなっています。(http://www.jst.go.jp/lcs/

学生へのメッセージ

エネルギー経済システムの研究には、工学、理学、経済学など広範なバックグラウンドが必要ですが、特定の学部や学科などのホームグラウンドがなく、さまざまな学科や研究所で独立して研究を進めている状況です。したがって、今後若手研究者を広く育成し、エネルギー経済システム学の発展に資するためには、関係研究室が広く交流をおこなって、得意分野の情報を共有しつつ、若手研究者の教育をおこなうことが必要です。また、本分野の体系を確立するには、上級研究者の力と共に、若手研究者のエネルギーと感性が必要です。是非とも自分に適したテーマを発見し、前向きに取り組んで下さい。

図1:低炭素社会の実現とその経済影響に関する研究の一例
図2:気候変動の緩和に関する国内・国際制度の設計と評価に関する研究の一例
図3:エネルギー環境関連技術の市場性分析に関する研究の一例