井 通暁/INOMOTO Michiaki

井 通暁 准教授

【研究分野】
環境・エネルギー分野
【研究領域】
核融合エネルギー、プラズマ理工学
【研究室URL】
http://tanuki.t.u-tokyo.ac.jp/inomoto/

研究内容

恒星中心部で起こっている核融合反応を地上で持続的に発生させることができれば、エネルギー問題の抜本的解決につながると考えられます。特に、高温のプラズマを磁場によって閉じ込める手法は、優れた性能を有するトカマク型に至って正味のエネルギーを取り出しうることが示されており、フランスにて国際熱核融合実験炉ITERの建設が進行しています。しかしトカマク型では、プラズマを閉じ込めるために強い磁場が必要とされるため、核融合炉建設の際には超電導コイルのコストが非常に高額となります。発電単価を抑えるためには、できるだけ弱い磁場を用いて高温のプラズマを閉じ込める(高ベータ)ことが必要となるのですが、高ベータプラズマの挙動については未解明な点が多く残されており、更なる研究が必要とされています。本研究室では球状トカマクや磁場反転配位といった高ベータ閉じ込め方式についての実験研究を通して、高ベータプラズマ物理の解明および経済的核融合炉の開発を目指しています。

磁場反転配位の高性能化と応用

高ベータを極限まで追求した磁場閉じ込め配位が磁場反転配位(FRC)とよばれるもので、100%に近い磁場利用効率を有する反面、プラズマを長時間維持することが困難とされてきました。近年になって回転磁場や変流器コイルを用いた電流維持、低周波波動や中性粒子ビーム入射による加熱等が試みられています。現段階での性能は決して優れているとはいえませんが、本質的に高い潜在能力を有しており、うまくいけば究極的な核融合炉心プラズマとなりえます。本研究室では、磁場反転配位の安定化、中性粒子ビームを用いた追加熱、低周波波動によるイオン加熱現象などの実験的検証を実施しています。磁場反転配位の内部には磁場がゼロとなる地点が存在し、波動励起の際には線形近似が成り立たないような複雑な挙動をすることが予測されており、基礎プラズマ物理として天文分野との関連性も注目されています。

球状トカマクの高ベータ化

磁場反転配位に次いで高いベータ値を達成している磁場配位が球状トカマク(ST)とよばれるもので、40%程度の磁場利用効率が達成されています。プラズマを閉じ込めておく能力が磁場反転配位よりも高く、現実的な手法であるといえます。この球状トカマクと前述の磁場反転配位とは、歴史的には全く異なった装置・実験手法として発達してきたのですが、近年になって両者の中間的な領域の存在が指摘されており、両者は全く別個のものではなく連続的につながるような概念なのかもしれません。新型装置UTSTを中心とした実験を通して、両者を統一的に取り扱い、超高ベータ領域に新たな可能性を探求しています。

高ベータプラズマの追加熱

磁場反転配位や球状トカマクにおいてプラズマを加熱する有力な手法が中性粒子ビームです。これは、プラズマ中のイオンよりも高いエネルギーを持つ粒子ビームを入射することによってプラズマを加熱するもので、高ベータプラズマにおいて不可欠な技術です。特に磁場反転配位研究においては、ビームによる準定常化実現は非常に大きなステップとなります。磁場反転配位ではプラズマ内の磁場が小さいため、効率的な中性粒子ビーム加熱のためには補足磁束の大きなプラズマを得た上で最適なビーム入射を行う必要があり、加熱効果の予測のための粒子軌道計算を実施し、実験による検証を行っています。

学生へのメッセージ

プラズマの実験研究は未知なる事象への挑戦であるといえます。当初の思惑通りに研究が進展することはまれであり、実験を行いながら現象を解釈し、仮説を立て、それを実証するために新たな実験を計画するというプロセスを経てひとつの知見がもたらされます。「何かを不思議に感じたらそれを解明する」という科学の本質に近い環境で研究を行ってみたいという皆様を歓迎します。

図1:球状トカマク合体実験装置UTST
図2:UTSTにおける放電の様子
図3:プラズマ合体実験装置TS-4と中性粒子ビーム源
図4:UTSTにおける平衡と高速イオンの軌道