EEIS 東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻

小林 正治 准教授

駒場キャンパス

ナノ物理・デバイス
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ナノ材料工学
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計算科学
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次世代のコンピューティング技術を支える半導体トランジスタ・メモリデバイス技術

平本/小林研究室では、将来の革新的集積ナノエレクトロニクスにおいてデバイスサイドからイノベーションを起こすことにより究極の集積ナノデバイスを追究し、世界の諸課題解決に貢献することを目指します。

研究分野1

新しい動作原理・構造による次世代トランジスタ技術

集積回路の低消費電力化を実現するにはトランジスタを駆動する電源電圧を下げることが最も効果的です。しかし単純に電源電圧を下げると今度は駆動電流が下がり回路の動作速度が落ちる問題があります。このトレードオフを解決するためにはトランジスタ急峻にスイッチさせなければなりません。ところがトランジスタのスイッチングの急峻さを表すサブスレショルド係数には、熱統計物理学で規定される60mV/dec(室温)という物理限界があります。この物理限界を打破するアプローチとして、負性容量トランジスタがあります。負性容量トランジスタ(NCFET)は強誘電体薄膜をゲート絶縁膜とするトランジスタで、実効的にチャネルの表面ポテンシャルを増幅し、急峻にトランジスタを立ち上げることができる大変興味深い技術です。私たちはNCFETのデバイス物理を追求するとともに、の超低電圧動作のための設計指針を提案し、実際にデバイス試作をして急峻サブスレショルド係数の実証とそのメカニズムの解明に取り組んでいます。
研究分野2

次世代強誘電体材料を用いた大容量・低消費電力メモリデバイス技術

データ駆動型社会においてはビッグデータの利活用が欠かせません。しかしIoTエッジデバイスで取得されクラウドに送られるデータ量はデータセンターのトラフィックよりはるかに大きく、ビッグデータの最大限の利活用が難しい状況です。そこでIoTエッジデバイス自体に大容量なメモリを搭載して機械学習を実行し、抽象化されたデータのみをクラウドに送る仕組みが重要になります。IoTエッジデバイスは利用できるエネルギーに制約があるのでメモリは低消費電力であることも不可欠です。私たちは半導体集積化技術と相性の良い強誘電体HfO2材料に注目して長年研究を行っています。HfO2薄膜における強誘電性発現のメカニズムの解明から、強誘電体キャパシタをSRAMに集積した不揮発性SRAM(NVSRAM)によるスマート電源管理技術の開発、超高密度メモリに向けた強誘電体トンネル接合(FTJ)メモリの設計・実証・理論性能予測、三次元積層型強誘電体トランジスタ(FeFET)の実現に向けたチャネル材料・動作原理の研究開発、など様々なテーマに取り組んでいます。
研究分野3

酸化物半導体と次世代不揮発性メモリの三次元集積化によるニューロモルフィックコンピューティング技術

ディープラーニングをはじめとする機械学習がイノベーションの源泉となっています。現在これらのアルゴリズムはパワフルなCPUやGPUを用いてソフトウェアによって実装されています。この実装は容易ではありますが、消費電力が大きいことが課題となっております。特に(1)で述べたIoTエッジデバイスで機械学習を行うにはよりエネルギー効率の高いコンピュータアーキテクチャが必要です。そこで近年注目されているのが、脳の計算機構を模したニューロモルフィックコンピューティングです。人工ニューラルネットワークがその代表例ですが、ニューロンとシナプスをメモリアレイと回路技術で実装することで、ベクトルデータと行列データの超並列計算が可能となります。通常人工ニューラルネットワークは二次元平面上に構成されるますが、私たちは酸化物半導体トランジスタ技術と(2)で述べたFTJなどの次世代不揮発性メモリの三次元集積技術で、より「立体的に」に実装することでデータ伝送効率を改善し、高エネルギー効率にハードウェア実装するための技術を研究開発しています。
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