電気系工学専攻長挨拶

専攻長挨拶

私の属する世代が生まれた頃は、50年前には、東海道新幹線が開業して世界の注目を集める一方、主な家電製品が三種の神器と呼ばれてありがたがられた時代です。その後、電気・電子技術は先達の多大な努力のおかげで、さらに大きく発展し、誰もが小型の情報通信機器を携帯し、いつでもどこでも情報ネットワークに繋がり、物理的な移動手段も電気鉄道はもとより電気動力を活用した自動車が普及しつつあります。

しかし、皮肉なことに、このように電気電子技術が大きく発展して「空気のような存在になった」結果、私たちの生活の基本を支えるこの大切な技術への人々の関心がかえって薄くなった時期がありました。21世紀を迎えて高齢化が進み、国の人口も減少に転じる中、技術の行方やビジネスの将来像に対する悲観論が盛んに唱えられた時もありました。

2011年の東日本大震災は多くの人々に深刻な被害をもたらし、私達の社会の見方に対する大きな問題提起となりました。特に、電気エネルギーが無尽蔵には得られないとの実感を多くの人が持つようになりました。その結果、エネルギー・マネジメントに知恵を使い、持続的に生活水準を向上させる鍵の技術として、電気・電子・情報技術が再び注目を集めるようになりました。

冷戦終結から30年、政治的主張ではなく一人一人の実質的な生活の質や文化的内容が世界的に重視されます。その中で、技術開発や研究の場で独自の考えをを発揮し国際的発信のできる人材が特に大切になります。

技術者の国際性とは、単に外国語でのコミュニケーション・スキルを有することでなく、文化の違いや摩擦を感じつつも、それを克服する努力をし、技術内容で切磋琢磨しつつ、本気で議論を重ね、他者から信頼される友人となり、言語の相違と国境を越えて助け合う人間関係を築くことのできる忍耐と人間力を意味するのでしょう。私達の電気系工学専攻は、そのような鍛錬を、日々の勉学を通じて自然にできる恵まれた環境を提供できます。そして、本専攻で皆さんが学び自ら研究する技術は、私たちの生活、文化が、今後の50年、100年の間にさらに魅力あるものとして成長するための重要な貢献をなすものです。自分の仕事を通じて、これからの社会を支え発展させたいという積極性と気力ある若い人材の参加を、国を超えて広く求めます。

2016年4月 東京大学大学院工学系研究科 電気系工学専攻長 古関 隆章