八井 崇/YATSUI Takashi

八井 崇 准教授

【研究分野】
ナノ物理・デバイス分野
【研究領域】
ナノ光工学、ダイヤモンド量子センサー、人工光合成
【研究室URL】
http://www.lux.t.u-tokyo.ac.jp/

研究内容

“Let there be light!”
「そのとき、神が『光よ、あれ』と仰せられた。すると光ができた。」
そうです、世界は光によって誕生したのです。そして、現代では尽きることのない人類の欲求を満たすべく世界は物(デバイス)をナノ寸法まで小さくし、そこに情報を蓄え処理する技術(ナノテクノロジー)の開発が行われています。このようなナノワールドにおいても、ナノ寸法に局在した光(近接場光)の誕生によって光技術は進展を遂げてきました。本研究室では、この近接場光の研究を行っており、近接場光がもつ非一様性によって、新しい現象を発見してきました(図1)。これらのナノ領域固有の現象を利用した新しい光化学反応や光デバイス応用を目指しています。

自然に学ぶナノ寸法光加工:ナノフォトニック加工とデバイス応用

近接場光は自然界のあらゆる場所に存在します。これは、どんなに平坦な表面においてもオングストローム寸法での凹凸が存在するからです。このナノ寸法以下の凹凸には必ず近接場光がするので、これを活用することにより、自己組織的な大面積一括加工が可能となります。この技術を応用した近接場光エッチングを用いると、基板表面は原子レベルで平坦化され、究極の平坦化基板が実現します(図2)。本手法で得られた超平坦化基板を用いることで、光および電子デバイスの利用効率が飛躍的に向上すると期待されています。さらに、近接場光エッチングは、従来平滑化が「不可能」であった立体構造の平滑化も「可能」となります。この特長を活かして、超高耐圧動作可能なダイヤモンドパワースイッチデバイス、超高感度磁気センサーなどの開発を目指しています。

近接場光を用いた持続可能な発展

現在、化石資源の枯渇などに代表される(1)エネルギー問題と(2)二酸化炭素発生などによる地球温暖化に代表される環境問題が深刻になっています。このため、枯渇してしまう可能性のあるエネルギー資源に替わる再生可能なエネルギー資源の開発・実用化が急がれています。本研究室では上記の問題を近接場光によって解決し、持続可能な発展が可能な社会作りを目指しています。究極的エネルギー資源として、太陽光と水によって発生する水素が注目されていますが、従来技術では、太陽光の光に最も含まれる可視光の利用効率が低いことが問題となっています。そこで、本研究室では、ナノ構造に発生する近接場光を活用することにより、可視光領域で高効率に応答する水分解用光触媒の開発を目指しています。

二酸化炭素を光によって分解するためには、高い光子エネルギーが必要となります。そこで、近接場光を介したフォノン援用励起過程に基づいて、高効率な二酸化炭素分解手法の確立を目指しています(図3)。さらには、分解された中間生成物からエタノール生成を実現する人工光合成への応用を目指しています。

間接遷移型半導体の発光・受光デバイス

近接場光を利用することで、間接遷移型半導体であるシリコンでさえも、高効率かつ高出力に発光することが可能になります(図4右図)。他の間接遷移型半導体(ダイヤモンドなど)により通信のみでなくディスプレイ、殺菌などへの応用を目指しています。

学生へのメッセージ

最先端技術である近接場光の研究はまだまだお宝がありドキドキが一杯です。こんなことや、あんなことができたら凄い!と思いをめぐらすワクワク感、思い通りの物ができた時の達成感、予測を超えた結果が得られた時の叫びたくなるような喜び、世界と触れ合える刺激、などなど。

図1:伝搬光と近接場光
図2:近接場光エッチングによるオングストローム平坦化(Light: Science & Applications, 5, e16054 (2016))
図3:近接場光による二酸化炭素分解の概念図(Scientific Reports 3, 3341(2013))
図4:(左図)伝搬光による光励起。(右図)近接場光による光励起。
図5:研究室写真