年吉 洋/TOSHIYOSHI Hiroshi

年吉 洋 教授

【研究分野】
ナノ物理・デバイス分野
【研究領域】
MEMS、マイクロメカトロニクス
【研究室URL】
http://toshi.iis.u-tokyo.ac.jp/toshilab/

研究内容

半導体プロセスで作れるものは集積回路だけではありません。いまでは、ミクロンオーダーの微小な「機械」をシリコン基板上に製作可能です。しかも、その機械を駆動・制御する回路とのモノリシック集積化もできる時代になりました。この技術をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と言います。身近な例では、マイクロミラーを用いた画像プロジェクタや、ゲーム機やクルマに搭載するMEMS加速度センサが知られています。本研究室では、MEMS 技術を光ファイバ通信や画像ディスプレィ、高周波無線通信デバイスなどに応用しています。ここでは最近の研究成果を紹介しましょう。

PZT圧電駆動型MEMS光スキャナ

当ラボではいろいろな光MEMSデバイスを設計・製作しています。その中でも、ヘッドアップ・ディスプレィやレーザー描画型ディスプレィへの応用を目指して企業と共同研究開発中の圧電駆動型MEMS光スキャナを紹介します。このデバイスは、面積1cm×2cm程度のチップの中に、直径1mm程度のミラー(鏡)を縦横2軸で走査するマイクロアクチュエータ(駆動機構)としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)薄膜を集積化した圧電駆動型の光スキャナです。ミラーの角度を圧電信号として取り出すことも可能です。

MEMS光スキャナを用いたインタラクティブ画像ディスプレィ

上の光スキャナでレーザー光を走査して画像を投影するディスプレィを研究開発しています。レーザー光は集束されていますので、スクリーンまでの距離やスクリーン形状に依存せずにクリアな画像が得られます。このため、図のようにシワのよった衣服の上にも画像を投影できます。また、同じ光学系をレーザー距離計として利用して、ユーザーの身振り手振りを検出して表示画像を制御するインタラクティブ画像ディスプレィを構築しました。将来的には、手のひらをスマートフォンの画像のように使って拡大・回転・スワイプすることを目指しています。

MEMS光スキャナの医療用内視鏡応用

ほかにも、体の内部を低侵襲観察する医療機器をMEMS技術で製作しています。直径2ミリメートル程度の微小な光スキャナ(振動する鏡)をシリコン・マイクロマシニングで製作し、レンズや光電変換素子(太陽電池)とともに細いガラス管に実装します。体の中に電線を差し込むのは感電・電磁波干渉の危険がありますので、この光ファイバ内視鏡は光によってエネルギ供給して、光で体内の画像を可視化します。MEMSミラーの設計から製作、評価まで、ラボ内で実施しています。

MEMS高周波スイッチのテラヘルツ光応用

MEMS技術は物体を透視するテラヘルツ光の制御にも応用可能です。大抵の材料はテラヘルツ光に対して透明であるため、従来のテラヘルツ装置は金属面の反射光学系で構成されており、小型化できませんでした。そこで本研究室では、テラヘルツ領域の共振子(SRR、Split Ring Resonator)とMEMS可変静電容量を組み合わせて、特定波長でON/OFFするフィルタを製作し、それを多数敷き詰めることで、テラヘルツ光に対してレンズ、回折格子、スキャナなどに使える装置を開発中です。

学生へのメッセージ

MEMSは電気、機械、化学、材料力学、流体力学、光学…の複合領域です。また、製作プロセスの構築には、材料特性、半導体プロセスを理解したパズル解法的なひらめきが必要ですし、プレゼンのテクニカル・ドローイング(製図)には、芸術的センスも必要です。新分野のMEMSで、現代のレオナルド・ダ・ビンチを目指してください。なお、連携先のEU研究機関(フランス、スイス、ドイツ、フィンランド)への短期留学制度として、学振・研究拠点形成事業を実施中です。

図1:PZT圧電駆動型MEMS光スキャナ
図2:MEMS光スキャナを用いたインタラクティブ画像ディスプレィ
図3:MEMS光スキャナを用いた医療用光ファイバ内視鏡
図4:MEMS駆動型スプリットリング共振子アレイによるテラヘルツ光学系