杉山 正和/SUGIYAMA Masakazu

杉山 正和 教授

【研究分野】
ナノ物理・デバイス分野
【研究領域】
III-V半導体ナノ構造太陽電池,半導体エネルギーデバイス・システム
【研究室URL】
http://www.ee.t.u-tokyo.ac.jp/~sugiyama/

研究内容

我々が直面するエネルギー問題には、エネルギーの発生、変換、輸送、貯蔵、さらにはシステム最適化に至るグローバルな取り組みが必要である。当研究室は、光と電気のエネルギー変換を革新的な高効率で行うことができる半導体デバイス-太陽電池と発光ダイオード-を主な研究対象にしている。光-電気変換を行う太陽電池の心臓部は、半導体のpn接合である。従来のシリコン単接合を用いた太陽電池の変換効率は、約30%を超えることはできない。III-V族化合物半導体を用いれば、格子定数を保ちつつバンドギャップの異なる材料のpn接合を積層した多接合セルにより、40%以上の効率を達成できる。さらに、ナノサイズの超格子構造を用いることで、結合量子準位を活用して効率50%以上を狙える。一方、電気から光への高変換効率を誇る発光ダイオード(LED)においても、III-V化合物半導体の特性を活かしたバンドエンジニアリングが発光効率を高め、ナノサイズの量子井戸を導入することでさらなる高効率を達成している。

このように、III-V化合物半導体結晶のナノ構造は高効率エネルギー変換デバイスの心臓部である。その高性能化や高効率生産の鍵を握るのが、エピタキシャル成長技術である。当研究室では、大規模生産までスケールアップ可能な有機金属気相成長(MOVPE)法を中心に、リソグラフィーやエッチングなどトップダウン的ナノ加工手法も活用し、半導体ナノ構造形成技術を追究している。このようなトップダウンとボトムアップの融合による半導体ナノ構造形成プロセスにより、エネルギー変換デバイスの高効率・高機能化を目指している。

研究テーマの例


III-V化合物半導体の量子構造を用いた高効率太陽電池

InGaAsP系化合物半導体の超格子を太陽電池に用いることで、エピタキシャル成長の基本条件である基板への格子整合を保ちつつ、バンドギャップの最適化を図り、多接合太陽電池のさらなる高効率化を達成できる。太陽電池には100周期もの歪み補償量子井戸を積層する必要があり、格子歪みのマネジメントが重要である。これまで当研究室で培ってきた結晶成長のin situ観察技術を駆使して、高効率太陽電池に求められる量子構造の成長技術を追究している。

多色モノリシック集積LED

現在の照明用の白色LEDは、おもに青色LEDと蛍光体の組み合わせでつくられている。しかし、演色性の高い照明のためには、多波長で発光するLEDを1チップに集積したい。3原色で発光する素子を1チップに集積・アレイ化すれば、LEDによる小型フルカラーディスプレイが実現できるかもしれない。量子井戸を用いたLEDでは、井戸の厚さにより発光波長を変調できる。そこで、基板上に適切なマスクパターンを施し、局所的に成長速度を変化させる「選択成長」技術を用いることで、さまざまな波長で光るLEDを一度の結晶成長で1チップ上に作製できる。このような高度なナノエピタキシャル成長の制御を、成長メカニズムの理解に基づいて進めている。

シリコン上のIII-V化合物半導体層成長

今日までのLSIの発展やマイクロマシンの進展を見れば、シリコンが最もすぐれた半導体デバイスの構造材料であり、またシリコンの微細加工技術がもっとも洗練されていることは明らかである。一方、III-V化合物半導体は基板材料として適さないが、高効率発光や高い電子移動度などシリコンにはない特性を有する。シリコン基板上にIII-V半導体を結晶成長できれば、両者のメリットを組み合わせた異種機能融合デバイスを展開できる。この夢に過去多くの研究者が挑戦してきたが、シリコンと化合物半導体の格子定数差の壁に阻まれ、デバイス品質の化合物半導体結晶層を得るには至らなかった。当研究室では、シリコン基板に微細パターンを施し、選択成長技術を駆使することでn-MISFETのチャネル層を標榜したInGaAs結晶層をシリコン基板上に成長することに成功しつつある。

学生へのメッセージ

人類の直面するエネルギー問題解決の鍵を握るのは、半導体デバイスプロセス技術だと思います。太陽電池、LEDなど、高効率化ブレークスルーをもたらすのは、高品位な半導体ナノ結晶です。世界最高水準のものづくり環境で最先端の装置を使いこなし、前人未踏の成果を目指しましょう。

図1:超高効率集光型太陽光発電モジュールと、その心臓部となるIII-V化合物半導体量子井戸
図2:化合物半導体結晶の有機金属気相成長(MOVPE)装置
図3:選択成長により作製した多色発光LED構造の蛍光顕微鏡写真
図4:シリコン基板上に選択横方向成長したInGaAsエピタキシャル結晶