関野 正樹/SEKINO Masaki

関野 正樹 准教授

【研究分野】
バイオ・複雑系分野
【研究領域】
生体医工学
【研究室URL】
http://www.bee.t.u-tokyo.ac.jp/index_j.html

研究内容

少子高齢化がますます深刻になる日本や世界において、健康寿命すなわち自律した生活ができる生存期間をいかに伸ばすかが重要課題になっています。身近に寝たきりや認知症などのお年寄りがおいでの学生さんは、それが実感として分かることと思います。そのためには、病気を早期に発見すること、そして、体に優しい方法で病気を治療することが大切です。磁場は、体の奥深くまで減衰せずに到達することから体内の鮮明な断層撮影を可能にするうえ、X線のような被曝もありません。また、パルス磁場を加えて脳内に生じた渦電流によりニューロンを刺激することで、長期に持続する痛みなどの症状を和らげる効果があり、脳外科手術に代わる新しい治療法として確立されつつあります。当研究室では、超電導を中心として、電磁界を利用した次世代の医療機器の開発に取り組んでいます。電磁気学や超電導工学の知識に基づいて新たな機器のアイデアを考案し、数値解析も利用しながら設計を進め、実際に機器を製作して実験を行います。医学・生物学系の研究室とも連携しながら、機器の応用研究を進めます。民間企業と協力して、機器の実用化を目指すこともあります。現在は、以下のような研究テーマに取り組んでいます。

MRIの新規画像計測技術

MRI(magnetic resonance imaging)は、超電導マグネットが発生する強磁場の下に置かれた人体や各種測定対象から発生する磁気共鳴信号をもとに、断層像を得る技術です。脳卒中や癌をはじめ、様々な病気の診断において、MRIから得られる鮮明な画像が欠かせません。従来のMRIは形態的情報を得ることに主眼が置かれていたのに対して、当研究室では電流や磁場、導電率、誘電率などの電気的情報を可視化する新たなMRI測定手法に取り組んでいます。これまで、神経活動に由来する微弱な磁場の検出にもとづく新しい脳機能イメージングや、異方性まで含めた生体組織の導電率のイメージングなどに成功しています。

脳の磁気刺激

経頭蓋磁気刺激は、頭部に置いたコイルからパルス磁場を発生させ、脳内に誘導される電流により神経を刺激する診断・治療法です。有限要素法を用いた数値解析により、磁気刺激における磁場分布や脳内電流分布を解析し、コイル設計や刺激条件の最適化に利用します。他大学や企業と連携して、患者が在宅で使用できる小型磁気刺激装置の開発および実用化にも携わっており、誘導電流発生の効率を高める新しいコイル形状の提案や、試作機の製作に取り組んでいます。

超電導磁気センサSQUIDを使った超低磁場MRI装置の開発

従来の1万分の1レベルの超低磁場で動作し、高感度の超電導磁気センサSQUIDを用いて信号を検出するような、新しいタイプのMRI装置を開発しています。この装置は、従来型MRIが苦手としてきた金属含有体を測定できるなどの特徴があり、将来的には、医療器具を装着した患者のMRI検査などへの利用を目指します。

NMR/MRIへの応用を目的とした高温バルク超電導体の捕捉磁場均一化

高温バルク超電導体は、コンパクトながら数テスラの強磁場を発生する能力があり、医薬品の動態追跡を目的とした小動物用MRI装置などへの応用が期待されています。そのための大きな技術的課題が、発生磁場の均一化です。これを解決するアイデアとして、バルク超電導体を同心円状に切り抜く加工を施して内部電流の経路を整える方法などを提案し、その有効性を示す実験を行っています。

認知症診断用MRIの新しい超電導マグネットの開発

縦型のMRI用超電導マグネットにおいて、下へ行くほど太くなるような上下非対称のコイル構造を取り入れれば、マグネットの開口部から近い位置に、画像取得のための磁場均一空間を生成できます。患者がMRI装置に入った状態でも広い視野が確保され、手足も動かせる利点があり、脳機能研究や認知症の早期診断などに有用です。非対称なコイル構造を有するMRI用超電導マグネットを、世界で初めて開発しました。

学生へのメッセージ

テクノロジーは、上手に活かせば人を幸せにします。それを最も実感できるところの一つが、医療の現場です。自分の研究が、認知症や癌などの早期発見や、脳卒中の後遺症の治療に役立つのなら、素晴らしいことだと思いませんか?超電導応用機器の研究は、それを実現する未来の医療につながっています。研究室では、世界で初めての事にチャレンジしたい人、電気工学の専門性を確立しながら幅広い分野に視野を広げたい人を歓迎します。また、国際会議や論文などを通じて、自分の考えや研究成果を世界へ発信しましょう。研究室は本郷キャンパスの工学部10号館にあります。

図1:MRIから得られる画像の例
図2:脳の磁気刺激と、誘導電流分布の数値解析
図3:SQUIDを用いた超低磁場MRI
図4:認知症診断用MRIの新しい超電導マグネット