関 宗俊/SEKI Munetoshi

関 宗俊 特任准教授

【研究分野】
バイオ・複雑系分野
【研究領域】
エネルギー変換材料工学、酸化物エレクトロニクス
【研究室URL】
http://www.bioxide.t.u-tokyo.ac.jp/

研究内容

現代社会を支えるエレクトロニクスは、基本素子の微細化による性能向上を原動力として劇的な発展を遂げてきました。しかしながら、微細化技術が限界に近付きスケーリング則の破綻が懸念される現在、従来の半導体技術の進化だけでなく、これまでにない高機能性を発現する新しい材料の創製が望まれています。また同時に、世界規模で深刻化の一途を辿る環境・エネルギー・資源の問題を克服しうる新たな材料技術の創出も喫緊の課題となっています。このような背景から、私たちは無毒で環境親和性に優れ、地球上の無尽蔵な資源である酸化物材料を対象として、革新的なエレクトロニクス材料・デバイスの開発研究を進めています。

太陽光エネルギー変換

α-Fe2O3(第二酸化鉄)は赤さびの主成分であり、日常でもっとも目にすることの多い酸化物の一つと言えるでしょう。その赤い色が示すように、α-Fe2O3は可視光スペクトルの緑〜青〜紫の短波長域の光を吸収する酸化物半導体です。バンドギャップは約2.1eV(波長に換算すると約600nm)で、これは太陽光スペクトルのほぼ中心に位置することから、古くから可視光応答型の光触媒や光電変換素子などへの応用に向けた研究が盛んに行われてきました。

我々は特に、光電気化学セルの半導体電極の候補材料として注目しています。光電気化学セルは、太陽電池への応用が可能であるだけでなく、太陽光水分解によって容易に水素を発生させることができるため、温暖化ガスを全く排出しないクリーンなエネルギー循環システムの実現に貢献しうると期待されています。私たちは、第一原理電子状態計算や独自の結晶薄膜成長技術、鉄イオン価数制御技術を駆使して、実用に耐えうる太陽光エネルギー変換効率・水素発生効率を有する酸化鉄光電極の開発を目指しています。

環境発電素子(エネルギーハーベスタ)

現在、光や熱、振動などの微小エネルギー源を用いた発現技術に関する研究が盛んに行われていますが、それらのほとんどは、古くからよく知られている物理現象を利用したものです。これからの高度情報化・環境調和型の社会において安定した電気エネルギーの確保・供給を実現するためには、従来にない概念・学理に立脚した革新的なエネルギー変換機能の創出が必要です。私たちは、これまで電気エネルギー変換の研究分野では全く注目されてこなかった電子スピンおよび原子価(イオン価数)の「揺らぎ」に焦点を当て、揺らぎ系に特有の光や熱に対する極めて敏感な応答性を積極的に利用した、新しい発電原理の確立を目指しています。

酸化物スピントロニクス

磁石の歴史は古く、紀元前数世紀に、古代ギリシャの遊牧民が鉄を吸い寄せる鉱物(Fe3O4: 磁鉄鉱、マグネタイト)を偶然見つけたのが人類と磁石の初めての出会いだと云われています。この人類最古の磁性体であるFe3O4とその関連物質(フェライト、酸化鉄)は、強磁性体(厳密に言うとフェリ磁性体)の代表格として古くから盛んに研究されてきました。磁性学の研究対象として見ると酸化鉄は魅力的とは言えなくなったかもしれませんが、近年、スピントロニクスの分野が形成されると、今度は酸化鉄が持つ新たな一面、すなわち室温強磁性半導体としての優れた特性が注目されるようになってきました。私たちは、酸化鉄が有する室温を遥かに超える磁気転移温度とスピン偏極率を活かした、新しい室温スピントロニクス素子の研究開発を推進しています。

学生へのメッセージ

研究は目標が高ければ高いほど失敗することも多く、時には行き詰って挫けそうになることもあると思います。そんなときは少し寄り道する気分で、積み重ねた失敗の中に何か新しい種がないか探してみましょう。新しい発見の多くは失敗の中から生まれるものです。大きな夢に向かって、チャレンジ精神とほんの少しの「遊び心」を持って、ともに楽しく研究を進めて行きましょう。質問や相談等があれば、いつでもお気軽にご連絡ください。

図1: 赤さびを用いた光電気化学セルと太陽光水分解
図2: 主な研究設備(設置場所:工学部12号館、10号館、武田先端知ビル)
図3: 環境発電、太陽光発電応用に向けた酸化鉄の原子価・機能制御