小関 泰之/OZEKI Yasuyuki

小関 泰之 准教授

【研究分野】
フォトニクス・ワイヤレス分野
【研究領域】
バイオフォトニクス
【研究室URL】
http://sites.google.com/site/ozekibp/

研究内容

本研究室では、最新のレーザ技術を駆使して生体組織を可視化したり生体分子の働きを解明したりすることで、生物学・医学の革新を目指す研究を進めています(図1)。研究内容は、計測原理・レーザ光源技術・制御回路系・光学系・データ解析法など、多岐にわたります。普段は地道な実験の積み重ねですが、レーザから光パルスが発生したり、生体の像が見える瞬間は、とても楽しいものです。電子工学を武器として、物理学・生物学・医学の境界領域を開拓しましょう。研究テーマは、次世代の顕微鏡やそのためのレーザ光源に関するものです。議論しながら決めていきましょう。以下では、最近の研究内容を紹介します。

誘導ラマン(SRS)顕微鏡の実証

がん手術などの医療現場において、透明な生体を染色せず迅速に観察する技術が求められています。我々は、最新の無染色観察手法であるSRS顕微鏡をハーバード大やシュツットガルト大と独立に実証しました。SRS顕微鏡では2色のレーザパルスを用いて生体の分子振動を高感度に捉え、無染色の生体をリアルタイムに観察することができます。現在、日米欧でSRS顕微鏡に関する研究開発競争が繰り広げられています。

分光イメージング

我々は高速に波長を切り替え可能なレーザ光源を開発し、ビデオレートSRS顕微鏡(図2)と組み合わせることで高速SRS分光顕微鏡を実現しました。本顕微鏡システムは、様々な分子振動周波数におけるSRS像を数秒〜数十秒で取得可能であり、これによってSRS顕微鏡の分子識別能を飛躍的に向上できます。更に、スペクトルのわずかな違いを検出して成分分離するデータ解析手法も開発しました。この顕微鏡システムを用いることで、ラットやマウスの生体組織を無染色で迅速に観察することに成功しました(図3, 4)。従来の染色過程において試料処理に数十分を要することと比較して、本分光イメージングシステムによって非常に迅速な生体組織観察が可能になったといえます。

ファイバレーザ光源

顕微鏡の実用性を高める上で、小型で安定な光源の適用は必須です。しかし、従来のSRS顕微鏡は大型の固体レーザが使用されていました。そこで、SRS顕微鏡のための小型なファイバレーザの研究を進めています。これまでに、ファイバレーザの強度雑音を低減する方式を実証し、ファイバ光源のみによる生細胞のSRSイメージングに初めて成功しました。今後、ファイバレーザの特長を更に活用し、固体レーザを凌駕する機能と性能を実現していきたいと考えています。

学生へのメッセージ

本研究室では、物理学と生物学/医学の境界領域であるバイオフォトニクスの研究を進めています。バイオフォトニクスには物理/化学/生物学など様々な分野の研究者が参入し、新しい科学技術が次々と生まれています。その中で我々は、高機能なレーザ光源・新しい光計測手法・データ解析法を地道に開発しています。計測原理からシステム全体までを把握するには広範な知識と技術が必要ですが、それはどの分野の研究者にとっても同じです。電子工学で学ぶ本質的な物理の理解とハードウェア/ソフトウェア技術は新しい分野に飛び込んで研究を進める上での大きな武器となるでしょう。そもそも境界領域研究は分からないことが多いものです。異分野の研究者とも一緒にディスカッションし、分からないことはお互いに質問しながら勉強しつつ、自分で考え、新しいことに挑戦し、世界をリードする研究を目指しましょう。

図1:研究概要。
図2:ビデオレートSRS顕微鏡の外観。
図3:無染色ラット肝臓の(a)多色SRS像及び(b)繊維の3次元SRS像。
図4:(a)生きたマウスの耳の皮膚を観察する様子。(b)皮脂腺周辺の多色SRS像。