日髙 邦彦/HIDAKA Kunihiko

日髙 邦彦 教授

【研究分野】
環境・エネルギー分野
【研究領域】
高電圧工学、電力エネルギー、電気材料学
【研究室URL】
http://www.hvg.t.u-tokyo.ac.jp/

研究内容

高電圧・放電プラズマ現象の不思議から生まれる新技術創成へのチャレンジ

高電圧・放電プラズマ現象はいつの時代も神秘的な魅力を提供しています。これを解き明かすことによって、ナノメータの電子デバイスの作製から数千kmの電力輸送ネットワークの構築、更には地球規模、宇宙規模の環境問題に対して、絶えず有効な原理や技術が創出され続けています。このように広範な学問領域を究めるべく研鑽を積んだ人は、社会のどの分野でも活躍できるポテンシャル持つことができると考えています。このような理念に基づき、高電圧・放電プラズマ現象を対象として、計測手法の開発、物理現象の解明、現象の工学的制御、そして新しい応用分野の創出などに関連する下記のような研究テーマに、熊田亜紀子准教授と共同で取り組んでいます。

オプトエレクトロニクスを活用した先進センシング

電気光学ポッケルスセンサは、放電空間中の電界測定に初めて応用されたオプトエレクトロニクス・センサです。従来不可能であった高電圧の直接測定を可能にし、更に直流から100MHzまでの広周波数帯域をもつ新型のポッケルスセンサを次々に開発しています(図1参照)。また、気体そのものが有する電気光学効果を利用すると、レーザ光を伝搬させるだけでその空間の電界が非接触で測定できる。こうした理想的な測定法を見出し、世界で最初にそれを実証することに成功しています。シャックハルトマン型レーザ波面計測を用いると、放電プラズマの電子密度分布を高い時間、空間分解能で測定でき、現在までに、感度を従来型の100倍程度改善することに成功しています。

マイクロセンサの開発

電子素子やMEMSの微細化、集積化が進むなか、微小な空間、界面の絶縁特性の把握が強く求められています。ナノ・マイクロ技術を駆使し、界面上を進展する放電現象を分解能3μmで測定するセンサの開発を行っています(図2参照)。

SF6ガスに代わる新しいガス及びその混合ガスの放電機構

優れた特性を有するSF6ガスも、地球温暖化ガスに指定されるなどいくつかの弱点が見いだされています。この弱点を克服できる新たなガスとしてCF3Iガスに注目し、研究を行っています。CF3Iガスは温室効果への寄与が極めて低く、しかもN2を40%まで混合してもなお純粋SF6ガスと同等の高い絶縁性能を示しており、興味深いガスと言えます。この研究を推進するために、電圧立ち上がり時間16ns、10μs経過後の減衰率2.5%以下、最大波高値200kVという理想的な急峻方形波高電圧発生器(SPURT、図3参照)を導入しています。

超電導機器における電気絶縁

超電導を利用して電気エネルギーの輸送や制御をコンパクトで経済性よく行おうとすると、電流密度の上昇だけでなく、数十〜数百kVの高電圧とのベストミックスが必要となります。長年、高温超電導技術の実用化を念頭に置いた絶縁方式の最適化に挑戦しており、現在は、高温超電導ケーブルにおいて採用されている絶縁紙と液体窒素との複合絶縁方式について検討を行っています。

マイクロ波によるPCB無害化

近年、マイクロ波(2.45GHz)照射によるPCB無害化処理が注目されていますが、その化学反応促進機構は未だ解明されていません。PCBの誘電加熱、触媒上におけるヒートスポット形成、触媒表面の放電(図4参照)に着目し、それらの測定から無害化のメカニズムに迫るデータを次々と得ているところです。

学生へのメッセージ

高電圧・放電プラズマ現象に関わる学問分野は、材料開発からシステム設計まで応用分野が広いにもかかわらず、まだまだ未解明な部分が多く存在しています。このことは未だに大家は存在せずだれでもエキスパートになれる可能性があるわけです。こうした学問の広がり、奥深さに興味を抱いた学生は、積極的に私たちの研究グループに加わって下さい。この分野を究める先輩だけでなく、研究の幅広さを活かして自分のポテンシャルを高め、電気工学、電子工学、情報工学の他分野はもちろんのこと工学以外の分野でも活躍している先輩が多数います。

図1:光導波路型ポッケルス電界センサ(LiNbO3、幅7ミクロン、長さ0.5mm)
図2:マイクロギャップにおける放電現象と電位分布計測用CMOS-MEMSチップ
図3:急峻方形波高電圧パルス発生器(SPURT、立ち上がり時間16ns、波高値200kV)
図4:マイクロ波照射下のPCB処理溶液中におけるRF放電